✍️ トレンドインサイト編集部|カテゴリ:お金・制度|2026年8月26日公開
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(更新日2026年7月31日)/同「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
医療費が高額になったときに払い戻しを受けられる「高額療養費制度」が、2026年8月の診療分から変わった。
報じられているのは主に上限額の引き上げだが、この見直しにはもうひとつ、見落とされている点がある。新しく設けられた「年間上限」は、8月から翌年7月までで数える。1月始まりではない。
この記事の初回公開月である2026年8月が、その1年目の起点にあたる。これから医療費がかさむ見込みのある人にとっては、いま知っておく意味がある。
この記事では、厚生労働省の公表資料をもとに何がいくら変わったのかを新旧で並べ、あわせて来年さらに一段の見直しが控えていることまで整理する。
📋 この記事でわかること
- 月額の上限がいくら上がったか(所得区分ごとの新旧比較)
- 新設された「年間上限」の仕組みと、8月起点であること
- 「多数回該当」は据え置かれたこと
- 2027年8月にもう一段の見直しが控えていること
- 編集部の見解:今月から記録しておくべきもの
結論:変わったのは3つ
| 項目 | 2026年8月診療分からの扱い |
|---|---|
| 月額の上限 | 所得区分に応じて引き上げ。低所得者には配慮 |
| 年間上限 | 新設。対象となる保険診療の自己負担について、年間上限を超えた分を保険者が還付する |
| 多数回該当 | 据え置き。長期に治療を続けている人の負担を増やさないため |
厚生労働省は今回の見直しについて、月額の上限を見直す一方で「多数回該当」の金額を維持したうえで、新たに「年間上限」を設けると説明している。上げるところと据え置くところを分けた、という構造になっている。
月額の上限はいくら上がったか
70歳未満の主な所得区分で並べるとこうなる。金額はいずれも1か月あたりの自己負担限度額である。
| 年収の目安 | 〜2026年7月 | 2026年8月〜 | 年間上限(新設) |
|---|---|---|---|
| 約1,160万円〜 | 252,600円+1% | 270,300円+1% | 168万円 |
| 約770万〜約1,160万円 | 167,400円+1% | 179,100円+1% | 111万円 |
| 約370万〜約770万円 | 80,100円+1% | 85,800円+1% | 53万円 |
| 〜約370万円 | 57,600円 | 61,500円 | 53万円 |
| 住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 | 29万円 |
表の「+1%」は略記であり、自己負担額全体に1%を掛ける意味ではない。2026年8月からの上位3区分の式は、それぞれ270,300円+(総医療費−901,000円)×1%、179,100円+(総医療費−597,000円)×1%、85,800円+(総医療費−286,000円)×1%となる。総医療費は保険適用前の10割の額。最後の区分で総医療費100万円なら、85,800+(1,000,000−286,000)×0.01=92,940円となる。多数回該当等を含まない計算例である。
年収約370万〜約770万円の区分では、計算式の定額部分が80,100円から85,800円へ5,700円増加した。ただし1%を加算する際の基準額も変わるので、実際の自己負担の差が一律5,700円という意味ではない。
新設された「年間上限」は8月から数える
ここが今回の見直しの新しい部分だ。
年間上限の仕組み
① 月ごとの自己負担額が積み上がっていく
② 対象となる自己負担が年間上限を超えた場合、超過分が還付の対象になる(窓口の支払いが自動でゼロになる意味ではない)
③ 上限を超えた分は保険者から還付を受けられる
※ ここでいう「年間」とは 8月から翌年7月まで。1月始まりではない
厚生労働省は、この年間上限を「多数回該当に該当しない長期療養者の経済的負担にも配慮する観点から」導入したとしている。
従来の高額療養費は月単位の管理が基本だった。そのため、毎月の医療費が上限には届かないが、年間を通すと相当な額になるという人は、制度の恩恵を受けにくかった。年間上限は、そこを拾うための仕組みにあたる。
年収約370万〜約770万円の主な区分では年間上限は53万円。12で割ると約44,167円だが、これは説明のための平均であり、毎月の限度額ではない。保険診療の対象となる自己負担を所定の方法で集計し、年間上限を超えた分が還付の対象となる。差額ベッド代など保険診療外の費用や入院時の食費等は別に考える。申請方法や集計対象は加入する保険者に確認したい。
据え置かれたもの、そして来年もう一段ある
今回の見直しで据え置かれたのが「多数回該当」だ。直近12か月のうち高額療養費に該当した月が3か月以上ある場合、4か月目以降は上限がさらに下がる仕組みで、年収約370万〜約770万円なら44,400円。この金額は変わっていない。
厚生労働省は、長期に継続して治療を受けている人の経済的負担を増加させないために据え置いた、と明記している。すでに毎月のように高額療養費を使っている人にとっては、今回の引き上げの影響は小さい設計になっている。
そのうえで押さえておきたいのが、この見直しが今回で終わりではないことだ。公表資料には、令和9年(2027年)8月からの金額も併記されている。
2027年8月からは所得区分の細分化が行われる。上のグラフは年収約650万〜約770万円の区分の例で、この層は定額部分が110,400円まで上がる。一方、同じ「約370万〜約770万円」でも年収約370万〜約510万円は85,800円+加算分、約510万〜約650万円は98,100円+加算分とされている。
つまり来年の見直しは、全員が一律に上がるのではなく、区分を細かく割ったうえで上の層だけを動かす形になっている。自分がどこに入るかで結論が変わるため、今回の数字だけを見て将来を判断しないほうがいい。
低所得層への配慮も入っている。年収約200万円未満に該当することが確認できた人には年間上限41万円が適用され、2027年8月以降に償還払いされるとされている。
✍️ 編集部の見解:今月から領収書を残しておく
この制度改正で、家計の側でまずできることの一つは記録を整理することだと編集部は考えている。8月分の医療費の領収書を、意識して残しておくことだ。
理由は単純で、年間上限のカウントが8月から始まるからである。年間上限は「月ごとの上限に届かない人」を拾うための仕組みなので、対象になるのは、通院が続いていて毎月そこそこ払っている層にあたる。月ごとの対象にならなくても、年間の確認に備えて記録を残しておく意味がある。
実務上さらに注意したいのが、年間上限に達したかどうかを自分で把握しにくい点だ。窓口での支払いが上限に達したかは、複数の医療機関・薬局にまたがると自分では合計しづらい。還付は保険者から受ける仕組みなので、加入先がどう案内してくるかを確認しておく必要がある。
もうひとつ。窓口での支払いそのものを上限までに抑えるには、マイナ保険証を使うか、事前に「限度額適用認定証」を用意しておく必要がある。厚生労働省もこの点を明記している。あとから還付を受けるより、最初から払わずに済ませるほうが資金繰りとしては軽い。保険証の扱いは今年8月に切り替わったばかりなので、手元にあるものが使えるかもあわせて確認しておきたい。
整理すると、今月やることは3つになる。領収書を残す。加入先の保険者を確認する。窓口で提示するものを用意しておく。いずれも治療が始まってからでは動きにくい。
よくある質問
まとめ
- 2026年8月の診療分から高額療養費制度が変わった。月額の上限が所得区分に応じて引き上げられた
- 年収約370万〜約770万円の区分は80,100円+1%から85,800円+1%へ。医療費100万円なら自己負担は約9.3万円
- 年単位の「年間上限」が新設された。同区分は53万円で、対象となる自己負担の超過分は保険者から還付される
- 年間上限の1年は8月から翌年7月まで。1月始まりでも年度始まりでもない
- 「多数回該当」は据え置き。ただし該当する前の月の負担まで不変とは限らない
- 2027年8月にもう一段の見直しがある。所得区分を細分化したうえで一部の区分が引き上げられる
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出典・訂正履歴
厚生労働省:高額療養費制度を利用される皆さまへ/同省:制度の見直し資料(2026年・2027年の限度額表)。2026年9月21日確認。
2026年9月21日訂正:2027年の年収目安510万〜650万円の区分を98,100円+加算分に訂正。年間上限と窓口支払いの違い、加算式、保険外費用の扱いを補足しました。
この記事は公表資料の整理であり、個別の給付判定ではありません。年齢・加入制度・所得・世帯合算・保険者変更等で扱いが異なります。具体的な対象額と手続きは加入する保険者にご確認ください。

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