2026年分の年末調整で変わること|178万円の壁と、扶養は136万円へ

お金・制度

✍️ トレンドインサイト編集部|カテゴリ:お金・制度|2026年8月14日公開

出典:国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」/国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」(令和8年4月・令和8年4月1日現在の法令等に基づく)

年末調整の書類が配られるのは10月から11月。まだ先の話に見えるが、今年に限っては8月に知っておく意味がある

令和8年度税制改正で、所得税の基礎控除と給与所得控除の最低保障額が引き上げられた。これにより課税が始まるラインが178万円になる。あわせて、扶養に入れる家族の収入の上限も動いた。

この後半が重要になる。扶養の判定に使う給与収入のラインが、123万円から136万円へ上がったのだ。年内の働き方でまだ調整できる家庭にとって、8月はぎりぎり間に合う時期にあたる。

この記事では、国税庁の公表資料をもとに何が・いつから・誰に効くのかを整理し、混同されやすい「106万円の壁」との違いも一枚の表にする。

📋 この記事でわかること

  • 178万円という数字の内訳(基礎控除104万円+給与所得控除74万円)
  • 扶養に入れる給与収入が123万円→136万円に上がったこと
  • 11月までは何も変わらず、12月の年末調整でまとめて精算される仕組み
  • 「106万円の壁」との違い(税と社会保険はまったく別物)
  • 編集部の見解:申告書を出さないと適用されない、という落とし穴

結論:変わるのは3つ。効いてくるのは12月

国税庁の資料によれば、令和8年度税制改正で行われたのは次の3つである。これらは原則として令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用される。

改正項目 改正前 改正後
基礎控除(所得税法の本則) 58万円 62万円
基礎控除(加算後の最大額) 95万円 104万円
給与所得控除の最低保障額 65万円 74万円
扶養親族等の所得要件(給与収入) 123万円以下 136万円以下

基礎控除の加算後の最大額104万円は、合計所得金額132万円以下(収入が給与だけなら206万円以下)の場合に適用される。ここに給与所得控除の最低保障額74万円を足すと178万円。これが「178万円の壁」と呼ばれている課税最低限の正体だ。

178万円の内訳

基礎控除(本則)     62万円

基礎控除(加算・最大)  42万円

給与所得控除(最低保障) 74万円

合計 178万円 = ここまで所得税がかからない

※ 収入が給与だけの場合。合計所得金額に応じて基礎控除の加算額は変わる

11月まで手取りは変わらない。12月にまとめて戻る

ここが実務上いちばん誤解されやすい。毎月の給与から引かれる所得税は、11月まで変わらない。

国税庁は「令和8年11月までの給与等及び公的年金等の源泉徴収事務に変更は生じません」と明記している。つまり8月から11月の給与明細は、改正前の源泉徴収税額表で計算された額のままだ。

では、いつ効くのか。令和8年12月に行う年末調整である。ここで引き上げ後の基礎控除額と、改正後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を使って1年分の税額を計算し直し、それまで引かれていた額との差額を精算する。

したがって、多くの人にとってこの改正は「12月の年末調整でまとめて戻ってくる」形で現れる。毎月の手取りが増えるのは、源泉徴収税額表そのものが改正される令和9年分(2027年1月)からになる。

扶養のラインが動いた。8月ならまだ調整できる

家計に直接効くのはこちらだ。基礎控除の引き上げに伴い、扶養控除などの対象となる扶養親族等の所得要件が改正された。給与収入に換算すると、こう動いている。

区分
給与収入ベースの上限(グレー=改正前、青=改正後)
扶養親族・配偶者
改正前 123万円
 
改正後 136万円(+13万円)
勤労学生
改正前 150万円
 
改正後 163万円(+13万円)
特定親族(上限)
改正前 188万円
 
改正後 197万円(+9万円)

正確な要件は合計所得金額で定められており、括弧内が収入は給与だけの場合の金額になる。整理すると次のとおり。

区分 改正前(給与収入) 改正後(給与収入)
扶養親族・同一生計配偶者
ひとり親の生計を一にする子
58万円以下
(123万円以下)
62万円以下
(136万円以下)
特定親族 58万円超123万円以下
(123万円超188万円以下)
62万円超123万円以下
(136万円超197万円以下)
配偶者特別控除の対象配偶者 58万円超133万円以下
(123万円超201万5,999円以下)
62万円超133万円以下
(136万円超207万円以下)
勤労学生 85万円以下
(150万円以下)
89万円以下
(163万円以下)

この改正は令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用される。今年の年収で判定されるため、8月時点なら残り数か月のシフトでまだ着地を調整できる。とくに学生アルバイトを扶養している家庭では、上限が13万円ぶん広がったことになる。

「106万円の壁」とは別物である

ここで整理しておきたいのが、社会保険側の壁との違いだ。当サイトでは2026年10月「106万円の壁」撤廃を扱ったが、あれとこれは別の制度である。

比較軸 178万円の壁 106万円の壁
何の話か 所得税(税金) 社会保険(厚生年金・健康保険)
超えると何が起きるか 所得税がかかり始める 保険料の負担が発生する
超えた瞬間の影響 超えた分にだけ課税。手取りが逆転することはない 保険料が発生し、一時的に手取りが減ることがある
2026年の動き 課税最低限が178万円に 10月に賃金要件が撤廃、週20時間が基準に

混同されやすいが、手取りの逆転が起きうるのは社会保険側だけだ。税金のほうは超えた分にだけかかるため、178万円を1円超えたからといって手取りが減ることはない。「壁」という同じ言葉が使われているせいで、両方とも超えると損をすると受け取られがちだが、性質が違う。

✍️ 編集部の見解:黙っていても適用されない部分がある

この改正で最も注意すべきは、手続きが要る部分があることだと編集部は考えている。

基礎控除と給与所得控除の引き上げは、勤務先が12月の年末調整で自動的に計算し直す。ここは放っておいても反映される。

しかし扶養の部分は違う。国税庁の資料には、この改正によって新たに扶養親族等の要件を満たすことになった親族について扶養控除等の適用を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要と明記されている。

つまり、去年は収入が130万円で扶養から外れていた家族が、今年は136万円以下なら扶養に入れるという場合、申告書を出さなければ控除は受けられない。しかも申告書の様式自体が前年分から変更されている。例年どおりの感覚で書いて出すと、書き漏らす可能性がある。

もうひとつ、年末調整の対象になるのは12月の給与だという点も押さえておきたい。11月までの明細を見て「何も変わっていない、自分には関係ない改正だった」と判断してしまうのは早い。変わるのは最後の1回である。

年内にできることとしては、扶養している家族の今年の収入見込みを、8月の時点で一度合計しておくのが確実だ。136万円・163万円・197万円のどのラインに近いかで、残り4か月のシフトの入れ方が変わる。年末に慌てて調整するより、いま把握しておくほうが選択肢が広い。

よくある質問

▶ Q. 毎月の手取りはいつから増えますか?
令和8年11月までの源泉徴収事務に変更はないため、11月までの給与明細は変わりません。令和8年分については12月の年末調整でまとめて精算されます。毎月の天引き額そのものが下がるのは、源泉徴収税額表が改正される令和9年分(2027年1月)からです。
▶ Q. 178万円という数字はどこから出てきたのですか?
基礎控除の加算後の最大額104万円と、給与所得控除の最低保障額74万円を足した金額です。収入が給与だけの場合、この金額までは所得税の課税所得が生じません。基礎控除104万円が適用されるのは合計所得金額132万円以下(収入が給与だけなら206万円以下)の場合で、合計所得金額が大きくなると加算額は段階的に小さくなります。
▶ Q. 扶養に入れる収入のラインはいくらになりましたか?
扶養親族・同一生計配偶者は、合計所得金額62万円以下(収入が給与だけの場合は136万円以下)に改正されました。改正前は58万円以下(同123万円以下)です。勤労学生は89万円以下(同163万円以下)、特定親族は62万円超123万円以下(同136万円超197万円以下)となっています。この改正は令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されます。
▶ Q. 何か手続きは必要ですか?
基礎控除・給与所得控除の引き上げは、勤務先が年末調整で計算します。一方、今回の改正で新たに扶養親族等の要件を満たすことになった親族について扶養控除等の適用を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要とされています。また、基礎控除申告書を含む申告書の様式が前年分から変更されているため、記入時に確認してください。
▶ Q. 「106万円の壁」と何が違うのですか?
178万円は所得税がかかり始めるラインで、106万円は社会保険に加入する基準の話です。税金は超えた分にだけかかるため、178万円をわずかに超えても手取りが減ることはありません。一方、社会保険は加入すると保険料の負担が発生するため、一時的に手取りが減ることがあります。制度も担当する役所も別で、同じ「壁」でも性質が異なります。

まとめ

  • 基礎控除は本則58万円→62万円、加算後の最大額は95万円→104万円に引き上げられた
  • 給与所得控除の最低保障額は65万円→74万円。合わせて課税最低限が178万円になる
  • 11月までは何も変わらない。令和8年分は12月の年末調整でまとめて精算される
  • 毎月の天引きが下がるのは令和9年分から。源泉徴収税額表の改正がそのタイミングになる
  • 扶養の給与収入ラインは123万円→136万円。勤労学生は150万円→163万円、特定親族の上限は188万円→197万円
  • 新たに扶養の要件を満たす家族については申告書の提出が必要。出さなければ控除は受けられない
  • 178万円の壁と106万円の壁は別物。手取りの逆転が起きうるのは社会保険側だけ

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※【出典】
・国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」(令和8年度税制改正により所得税の基礎控除の引上げ、給与所得控除の最低保障額の引上げ及び扶養親族等の所得要件の改正等が行われ、原則として令和8年12月1日に施行、令和8年分以後の所得税について適用。令和8年12月に行う年末調整など令和8年12月以後の源泉徴収事務に変更が生じ、令和8年11月までの源泉徴収事務に変更は生じない)
・国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」令和8年4月(令和8年4月1日現在の法令等に基づく。所得税法第86条の基礎控除額62万円・改正前58万円、租税特別措置法第41条の16の2による加算後の額は合計所得金額132万円以下で104万円、給与所得控除の最低保障額65万円が74万円に引上げ、扶養親族等の所得要件の改正、令和9年分以後の源泉徴収税額表の改正)
※【免責】本記事は公表されている情報をもとに編集部が整理したものです。基礎控除の加算額は合計所得金額に応じて変わり、特定支出控除や所得金額調整控除の適用がある場合は本文中の給与収入換算額と異なります。個別の判定や手続きについては、勤務先の給与担当部署または所轄の税務署にご確認ください。

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