「住民税が上がった!?」6月給与明細ショックの正体を7月に読み解く

お金・制度
TI
トレンドインサイト編集部(生活・お金担当)
公開 2026.07.30
出典:各自治体の令和8年度住民税改正案内/総務省・財務省公表資料

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6月の給与明細を見て「住民税、上がってない?」と感じた人は少なくないはずです。ネットで検索すると「定額減税が終わったせい」という説明が数多く出てきます。

ただし、これは1年前の話です。住民税の定額減税は令和6年度(2024年6月〜2025年5月)で終了しており、「本来の水準に戻る」ショックが起きたのは2025年6月でした。しかも2026年度の住民税は、制度としてはむしろ減税方向に改正されています

ではなぜ上がって見えるのか。この記事では、時系列と仕組みの両面から正体を整理します。

「定額減税の終了」はいつの話だったのか

まず事実関係を時系列で押さえます。住民税の定額減税(1人あたり1万円)は、令和6年度住民税で実施されました。

年度 徴収期間 定額減税の扱い
令和6年度 2024年6月〜2025年5月 6月は徴収なし。減税後の年税額を7月〜翌5月の11か月で分割徴収
令和7年度 2025年6月〜2026年5月 原則として通常どおりに戻る(※一部に例外あり・後述)
令和8年度 2026年6月〜2027年5月 定額減税とは無関係。別の改正が適用される

会社員の住民税(特別徴収)は6月〜翌5月の12か月で徴収されるため、毎年6月が新年度の税額に切り替わるタイミングです

令和6年度は6月分が徴収されなかったという特殊な形だったため、翌2025年6月に「6月なのに引かれている」という落差が生まれました。これが「定額減税終了ショック」の正体です。2026年6月の話ではありません

なお例外として、令和7年度分の住民税に係る合計所得金額が1,000万円超1,805万円以下で、控除対象配偶者以外の同一生計配偶者がいる人については、令和7年度に1万円の特別控除が適用されました。該当する人は、2026年6月にこの分が上乗せに見えている可能性があります。

2026年度は、制度としてはむしろ減税されている

ここが見落とされがちな点です。令和8年度(2026年度)の住民税から適用される主な改正は、納税者の負担を減らす方向のものです。

令和8年度住民税から適用される主な改正
給与所得控除の最低保障額
55万 → 65万
扶養親族等の所得要件
58万 → 62万円以下

いずれも2025年1月1日〜12月31日の収入に対して課税される令和8年度住民税から適用されます。控除が増えるということは、同じ収入なら税額は下がるということです。

つまり「制度が増税されたから上がった」わけではない。それでも税額が上がった人がいるとすれば、原因は制度側ではなく収入側にあります。

なぜ上がったように見えるのか

住民税は「前年の所得」で決まる

住民税の最大の特徴は、1年遅れでやってくることです。2026年6月から引かれる住民税は、2025年1月〜12月の所得をもとに計算されています。

ここ数年は賃上げが続き、2026年夏のボーナスは5年連続の増加でした。2025年に昇給した人、残業が増えた人、賞与が増えた人ほど、その分が2026年6月の住民税に反映されます。給与所得控除の引き上げによる減税効果を、収入増による増税効果が上回れば、差し引きでは増えます。

住民税が「1年遅れ」で来る仕組み

2025年1月〜12月の所得 → 2026年度の住民税として確定 → 2026年6月〜2027年5月の給与から徴収

このズレがあるため、収入が減った年ほど住民税は重く感じられます。転職・退職・時短勤務などで収入が下がった翌年は、前年の高い所得をもとにした税額を、下がった収入から払うことになるためです。

「参照点のズレ」という心理

もうひとつ、体感を強める要因があります。行動経済学でいう参照点——比較の基準がどこにあるか、という問題です。

令和6年度は6月の住民税が徴収されず、その分だけ手取りが多い月がありました。この「一時的に多かった状態」が基準になってしまうと、通常に戻っただけでも「減らされた」と感じます。実際には損をしていなくても、体感としては損失に見える。これが多くの人が抱いた違和感の中身です。

自分のケースを確認する手順

  • ①住民税決定通知書を見る:6月頃に勤務先経由で配布されます。前年の所得金額、各種控除額、年税額が記載されているので、去年の通知書と並べて比較すれば何が増えたかが分かります
  • ②給与明細の5月分と6月分を比べる:住民税は6月に切り替わるため、この2か月を比較すると変化額が一目で分かります
  • ③控除欄をチェックする:扶養家族の異動、生命保険料控除の申告漏れ、医療費控除の未申請などがあれば、本来より高い税額になっている可能性があります
  • ④社会保険料も確認する:住民税だけでなく、健康保険料・厚生年金の標準報酬月額の改定が手取り減の原因になっていることもあります。9月分(10月給与)からの改定が一般的です

いま打てる手は「控除」しかない

ここが重要な点です。住民税は前年所得で確定しているため、すでに決まった今年の税額を下げることはできません。動かせるのは来年の税額です。逆に言えば、今年のうちに手を打てば来年6月に効きます。

  • ふるさと納税:翌年度の住民税から控除されます。ただし「減税」ではなく「前払い+返礼品」である点は誤解しないでください。実質2,000円の自己負担で返礼品を受け取る仕組みです。2026年10月に返礼品のルールが厳格化されるため、動くなら9月末までが有利です
  • iDeCo(個人型確定拠出年金):掛金の全額が所得控除の対象になります。所得税と住民税の両方に効き、拠出している間ずっと続く効果があります。ただし原則60歳まで引き出せません
  • 医療費控除:年間の医療費が一定額を超えた場合に申告できます。同一生計の家族分を合算でき、通院の交通費も対象になる場合があります
  • 生命保険料控除・地震保険料控除:年末調整で申告し忘れているケースが意外に多い項目です。控除証明書が届いたら確実に提出してください
手取りを守るもうひとつの手

税額は来年まで動かせませんが、固定費は今月から下げられます。電気・ガスの補助は2026年10月で終了します。

よくある質問

▶ Q. 「定額減税が終わったから住民税が上がった」という説明は間違いですか?
2026年6月の話としては、時期がずれています。住民税の定額減税は令和6年度(2024年6月〜2025年5月)で実施され、令和7年度から原則として通常に戻りました。したがって「本来の水準に戻った」落差が生じたのは2025年6月です。2026年6月の変化は、前年(2025年)の所得の増加や、扶養・控除の状況の変化によるものと考えるのが自然です。
▶ Q. 収入は増えていないのに住民税が上がりました。なぜですか?
考えられるのは次のケースです。①扶養家族が外れた(子の就職、配偶者の収入増など)、②生命保険料控除などの申告漏れ③前年に一時所得があった(保険の満期金、副業収入、株式の売却益など)、④ふるさと納税のワンストップ特例申請が期限までに提出できていなかった。まず住民税決定通知書で、前年と控除額を比較してください。
▶ Q. 退職した年の翌年は住民税がきついと聞きました。本当ですか?
本当です。住民税は前年所得で決まるため、収入がなくなった年にも、働いていた年の所得に基づく税額を払うことになります。退職・転職・独立を予定しているなら、前年の年収の約10%を目安に住民税分を別に確保しておくと安全です。退職時に一括徴収されるか、自分で納付する普通徴収に切り替わるかは時期によって変わるので、勤務先に確認してください。
▶ Q. 住民税決定通知書はどこを見ればいいですか?
見るべきは3か所です。①「所得」欄で前年の所得金額を確認、②「所得控除」欄で基礎控除・社会保険料控除・扶養控除・生命保険料控除などが正しく反映されているかを確認、③「税額」欄で年税額と月々の徴収額を確認します。前年の通知書と並べると、増えたのが所得なのか、減ったのが控除なのかが特定できます。
▶ Q. ふるさと納税をすれば住民税は安くなりますか?
住民税は減りますが、「安くなる」という表現は正確ではありません。先に寄付という形で支払い、その分が翌年度の住民税から控除される仕組みなので、負担の総額はほぼ変わりません(実質的な自己負担は2,000円)。得になるのは返礼品を受け取れる点です。上限額を超えた分は純粋な自己負担になるため、必ず控除限度額を試算してから寄付してください。

まとめ:正体は「増税」ではなく「1年遅れ」

  • 住民税の定額減税は令和6年度で終了。「本来の水準に戻った」落差が生じたのは2025年6月であって、2026年6月ではない
  • 2026年度は制度としてはむしろ減税方向。給与所得控除の最低保障額が55万→65万円、扶養親族等の所得要件が58万→62万円以下に引き上げ
  • それでも上がって見えるのは、住民税が前年(2025年)の所得で決まるから。賃上げや賞与の増加が1年遅れで反映される
  • 令和6年度は6月分が徴収されなかったため、その「多かった月」が基準になって損失に見える(参照点のズレ)
  • 今年の税額は変えられない。動かせるのは来年分——ふるさと納税・iDeCo・医療費控除・生命保険料控除を今年のうちに
  • 退職・転職を予定しているなら、前年年収の約10%を住民税分として確保しておく

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※出典:各自治体が公表する令和8年度個人住民税の改正案内、総務省・財務省の定額減税に関する公表資料。税額・控除の適用は個々の所得や家族構成により異なります。具体的な判断は、お住まいの自治体の税務担当窓口または税理士にご確認ください。本記事は特定の金融商品を推奨するものではありません。

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